新しい社員が早期に戦力化し、長く定着してもらうためには「オンボーディング」が極めて重要です。
多くの企業では、マニュアルや研修カリキュラムを整備していますが、それだけでは十分ではありません。
実は、オンボーディング成功のカギを握るのは「感情体験」にあります。
社員が入社して最初の3ヶ月でどんな感情を経験するかが、その後の定着やパフォーマンスを大きく左右するのです。
今回は、オンボーディングにおける「感情体験」の重要性と、実践すべきポイントについて解説します。
「感情体験」が定着率を左右する理由
入社直後、社員は期待と不安が入り混じった心理状態にあります。
この時期にポジティブな感情──たとえば
• 受け入れられたという安心感
• 成長できるという期待感
• 自分は役に立っているという充実感
を得られると、職場へのエンゲージメント(愛着・忠誠心)が急速に高まります。
逆に、
• 孤立感
• 不安感
• 疎外感
といったネガティブな感情体験をすると、わずか数ヶ月で「ここは自分の居場所ではない」と判断し、早期離職に至るケースが多いのです。
つまり、オンボーディングの本質は、スキル習得だけでなく「感情のケア」にあると言えます。
入社3ヶ月で差がつく「感情設計」とは?
では、具体的にどのように感情体験を設計すればよいのでしょうか?
ポイントは次の3つです。
1.「歓迎されている」と実感させる
最初の印象は何より大切です。
入社初日から
• 笑顔で迎える
• 全社員に紹介し、ウェルカムメッセージを送る
• 小さなことでも「ありがとう」と言葉にする こうしたシンプルな行動が、新入社員の安心感を大きく高めます。
「自分は歓迎されている」という感情は、職場へのポジティブな第一印象を形成し、定着意欲を高めます。
2.「成功体験」を意図的に用意する
入社後すぐに大きな成果を求めるのではなく、
小さな成功体験を意図的に積ませることが重要です。
• できる範囲の仕事を任せ、達成感を味わってもらう
• 小さな進捗でもしっかりフィードバックする
• チーム内で成果を認め合う機会をつくる
最初に成功体験を得ることで、「ここでなら成長できそうだ」という前向きな期待感が生まれます。
3.「帰属意識」を育てる
単なる業務の指示・報告だけでなく、
• チームビルディングの場をつくる(食事会、雑談ミーティングなど)
• ビジョンや価値観を共有する
• 雑談や感情のやりとりを積極的に行う といった働きかけで、心理的な一体感を育てましょう。
「このチームの一員だ」と感じられることが、長期定着への強力なドライバーになります。
成功する企業が実践している「感情マネジメント型オンボーディング」
感情体験を重視したオンボーディングを実践している企業は、次のような工夫をしています。
• 入社前からウェルカムメッセージを送り、不安を払拭
• 初日から上司が個別に声をかけ、雑談の機会をつくる
• 最初の1ヶ月で「できたことシート」を使って小さな成功を可視化
• チーム内で「称賛の言葉」を送り合う文化を醸成
これらはすべて、意図的にポジティブな感情体験を設計している例です。
単なるマニュアル・制度整備ではなく、感情に寄り添うコミュニケーション設計こそが、オンボーディングの成否を分けるのです。
まとめ:感情体験をデザインし、10年定着への道をひらく
社員の定着を本気で目指すなら、オンボーディングで「何を教えるか」だけでなく、
「どんな感情を経験させるか」をデザインする視点が不可欠です。
歓迎され、支えられ、成長を実感し、仲間に受け入れられる。
そんな感情体験を通じて、社員は「ここにいたい」という強い思いを育みます。
入社3ヶ月は、たった数ヶ月ではなく、10年定着™の未来を左右する“勝負の期間”です。
感情をマネジメントするオンボーディングで、社員が辞めない職場を一緒につくっていきましょう。