離職が続く会社には、実は明確なパターンがあります。
個人の資質や一時的な上司との相性だけが理由ではありません。
人が辞める組織には、必ず“構造的な原因”が存在しています。
本稿では、150社以上の人材育成・組織開発の現場を見てきた立場から、離職が止まらない会社に共通する「5つの要因」をお伝えします。
離職は、感情だけでも、制度だけでも説明できません。
複合的な要因が積み重なって「辞めたい」という判断に至ります。
だからこそ、企業は“構造そのもの”を見つめ直す必要があります。
❶ オンボーディング(初期教育)が不十分である
離職が多い会社の最大の特徴は、「最初の3ヶ月」が弱いことです。
たとえば、
• 初日に誰が教えるか決まっていない
• 仕事の全体像を説明しないまま現場に出す
• 業務の基準が属人的
• 小さな成功体験を意図的に積ませていない
オンボーディングは“入社後ギャップ”を埋め、社員が自信を持つための重要なプロセスです。
ここが弱いと、不安・混乱・孤立が蓄積し、離職リスクが急上昇します。
優良企業の多くは「90日プログラム」を用意し、
「誰が・何を・どこまで」責任を持って育成するかを明確化しています。
初期教育は“定着率のもっとも大きな差が生まれるポイント”です。
❷ コミュニケーションと情報共有の仕組みが弱い
離職が続く職場は、コミュニケーションが「個人の努力」に依存しています。
• 上司が忙しすぎて質問ができない
• チーム内で情報が共有されていない
• 相談したいが、誰に聞けばよいかわからない
• 1on1や定例ミーティングが形骸化している
これらは「機能としてのコミュニケーション」が整っていない状態です。
離職が少ない組織には、必ず“仕組みとして”のコミュニケーションがあります。
• 定例の共有タイム
• 1on1の定期実施
• 引き継ぎのフォーマット
• 不満や提案を吸い上げるルート
仕組み化できていない会社は、気づかないうちに社員を孤立させてしまいます。
❸ 評価・育成の基準が曖昧でキャリアの見通しが持てない
離職を引き起こす要因のひとつが“将来の不透明さ”です。
• 何をできれば評価されるのか
• どんなスキルを伸ばせば昇格できるのか
• キャリアの道筋が見えない
こうした曖昧さは、働く意欲を削いでしまいます。
離職が多い会社ほど、基準が可視化されていません。
一方で、定着率が高い組織ほど、
• 行動評価の明確化
• キャリアパスの可視化
• 育成計画の個別設計
• フィードバックの定着文化
を整備しています。
社員が安心して働き続けるには、“未来の道筋”が不可欠です。
❹ マネジメントスキルのばらつきが大きい
離職が続く会社では、「上司によって当たり外れが大きい」という現象が起きます。
• 教えるのが得意な上司と、説明が苦手な上司が混在
• 部下への関わり方が人によってバラバラ
• 指示の出し方やフィードバックの質に差がある
• チーム全体が属人的で標準化されていない
この“マネジメントのばらつき”こそ、離職の大きな要因です。
離職の少ない会社は、
「マネジメントは個人の性格ではなく、スキルである」
という前提で教育を行っています。
• 指示の出し方
• 業務の役割分担
• 面談スキル
• チーム運営
• 振り返り・レビューの仕組み
こうしたスキルを体系的に育成することで、上司間の質の差を減らしています。
❺ 会社の方向性・目的が社員の業務と結びついていない
離職が止まらない組織は、理念・ビジョンが現場と切り離されています。
• 会社としてどこを目指しているのか
• 自分が日々やっている仕事が何に貢献しているのか
• 組織のゴールと個人の役割がつながっていない
この状態では、働く意味を実感しにくく、“続ける理由”を見失ってしまいます。
優良企業では、
• ビジョンを日常の会話に落とし込む
• 事例・ストーリーで価値を伝える
• 役割とミッションを明確化する
ことで、社員が業務の意味づけを持てるようにしています。
方向性が共有されている組織は、迷いが減り、離職も下がります。
◆まとめ:離職は「制度×環境×育成×マネジメント×情報共有」の積み重ねで起きる
離職が多い会社を分析すると、感情論に加え、“構造的な5要因”が必ず存在します。
1. オンボーディングの弱さ
2. コミュニケーション仕組みの欠如
3. 評価・キャリアの不透明さ
4. マネジメントスキルのばらつき
5. 目的や方向性の共有不足
これらは全て“会社の設計”で改善できるものです。
離職は運でも個人要因でもありません。
見える化し、仕組みを整えれば、必ず減らすことができます。