マネージャーの疲弊が組織を蝕む~中間管理職のエンゲージメントを守る3つの視点~

「部下のエンゲージメント向上」「心理的安全性の確保」「1on1の充実」——。近年、マネージャーに求められる役割は拡大の一途をたどっています。経営層からは業績向上の圧力を受け、現場からは日々の相談やケアを求められる。その間に立つ中間管理職は、まさに組織の要ともいえる存在です。しかし、その要であるマネージャー自身が疲弊し、燃え尽きかけているとしたら、組織の成長戦略は根底から揺らぎかねません。今、最も支援を必要としているのは、実はマネージャー自身ではないでしょうか。本コラムでは、最新の調査データをもとに、マネージャーの疲弊の実態と、組織として取り組むべき3つの視点をお伝えします。

■ 深刻化する「管理職の燃え尽き」問題
マネージャーの疲弊は、もはや個人の問題ではなく、組織全体の経営課題です。2024年に8カ国11,000人の労働者を対象に実施された国際調査では、回答者の48%がバーンアウト(燃え尽き症候群)を経験していると報告されています。特に管理職層はその傾向が顕著であり、週に15時間以上を会議に費やしている管理職の60%が深刻なストレスを訴えているというデータも報告されています。
日本においても、状況は深刻です。多くの管理職がプレイングマネージャーとして、自らも現場の最前線で成果を出しながら、同時に部下の育成・メンタルケア・業績管理を担わなければなりません。さらに、リモートワークの普及に伴い、対面では自然に生まれていたコミュニケーションの機会が減少し、マネージャーの孤立感が増しているという指摘もあります。こうした複合的な負荷が、管理職の心身の健康を蝕んでいるのです。

■ マネージャーが本当に求めている支援とは
2026年2月に実施された管理職300名を対象とした意識調査では、マネージャーが最も課題と感じている領域は「業務効率化・生産性向上」(50.7%)でした。これは単なる効率化の要望ではなく、プレイヤー業務との兼務から脱却し、マネジメントに専念したいという切実な願いの表れです。続いて「心理的安全性の醸成」(41.7%)、「1on1の質の向上」(38.3%)が挙がっており、部下とのコミュニケーションの質を高めたいという意欲も強いことがわかります。
注目すべきは、マネジメントの高度化に向けて活用したいツール・手法です。「タレントマネジメントシステム」(52.3%)、「生成AI」(46.0%)、「エンゲージメントサーベイ」(41.7%)が上位を占めました。マネージャー自身がデータやテクノロジーを積極的に活用して、より科学的で再現性のあるマネジメントを志向している姿が浮かび上がります。つまり、マネージャーは「助けを求めている」のではなく、「より良いマネジメントを実現するための武器が欲しい」と考えているのです。この視点を見逃してはなりません。

■ 組織として取り組むべき3つの視点
第一に、「マネージャーの業務量の可視化と適正化」です。管理職の仕事は「会議」「承認」「調整」「育成」など多岐にわたりますが、その全体像は定量化しにくく、知らず知らずのうちに過負荷に陥りがちです。具体的には、会議時間の棚卸しを行い、不要な定例会議を廃止すること、報告書作成などの間接業務を見直して簡素化すること、そして意思決定権限をチームメンバーに委譲し、マネージャーがボトルネックにならない仕組みを構築することが重要です。こうした取り組みにより、マネージャーが本来のマネジメント業務——すなわち人を育て、チームの方向性を示す仕事——に集中できる環境を整えましょう。
第二に、「マネージャー同士が学び合い、支え合う場の創出」です。調査によると、上司から高い評価を受けているマネージャーほど、部下からの信頼も厚く、チーム全体のエンゲージメントスコアが高い傾向が確認されています。これは、マネージャー自身が「良いマネジメントとは何か」を日常的に学び、実践している証拠といえるでしょう。マネージャー同士のピアコーチングの場を定期的に設けたり、経営層との対話セッションを実施したりすることで、マネージャーの孤立を防ぎ、組織全体でマネジメントの質を底上げすることが可能になります。「マネージャーを孤独にしない」ことが、組織の持続的成長の鍵です。
第三に、「マネージャー自身のキャリアと成長への投資」です。部下の育成やエンゲージメント向上を経営課題として掲げるならば、その担い手であるマネージャーのキャリア開発にも同じだけの関心と投資を向けるべきです。外部研修やエグゼクティブコーチングへの参加を支援すること、マネジメントスキルそのものを正当に評価する人事評価制度を整備すること、そしてマネージャーとしてのキャリアパスを明確に提示すること。これらが、マネージャーのモチベーション維持と長期的な成長意欲に直結します。「管理職になることが罰ゲーム」と言われるような組織文化では、優秀な人材がマネジメント職を敬遠してしまいます。マネージャーという役割に誇りを持てる環境づくりこそが、組織の未来を左右するのです。

■ おわりに
組織の成長を支える屋台骨であるマネージャーが、自らのエンゲージメントを失ってしまっては、どれほど優れた経営戦略も、どれほど斬新な人事施策も機能しません。「部下を支える前に、まずマネージャーを支える」——この視点の転換こそが、今の時代に求められるリーダーシップの出発点ではないでしょうか。あなたの組織では、マネージャーの声に耳を傾ける仕組みが整っていますか。マネージャーが安心して悩みを打ち明け、学び、成長できる場はありますか。その問いに向き合うことが、組織全体のエンゲージメント向上への第一歩です。今日から、その一歩を踏み出してみてください。

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