「管理職の罰ゲーム化」を防ぐ~中間管理職のモチベーションを守る組織支援の最前線~

「最近、管理職になりたがる若手がいない」「課長が疲弊していて、チーム全体の士気が下がっている」――こうした声を、経営会議や人事面談の場で耳にする機会が増えていないでしょうか。近年、日本企業において中間管理職の負担増大が深刻な経営課題として浮上しています。働き方改革やコンプライアンス強化が進む一方で、その対応コストの多くが中間管理職に集中し、いわば「管理職の罰ゲーム化」とも呼ばれる現象が広がっています。本コラムでは、最新の調査データを交えながら、中間管理職のモチベーション危機の実態と、それを乗り越えるための組織的な支援策について考えていきます。

■データが示す中間管理職の「悲鳴」
中間管理職が置かれている状況の深刻さは、複数の調査データからも明らかです。株式会社スタメンが2024年11月に1,366名の中間管理職を対象に実施した調査によると、実に94.9%の中間管理職が「他の役職と比較して負担が大きい」と感じていることが分かりました。さらに、働き方改革の実施後に中間管理職の負担が増えたと回答した割合は74.0%に上ります。部下の残業を削減するために自らが業務を引き受け、結果として管理職自身の労働時間が増加するという皮肉な構図が浮かび上がっています。
また、リクルートマネジメントソリューションズが2025年に実施した「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査」では、人事担当者・管理職ともに70%以上が「管理職に関する課題感」を持っていると回答しています。特に管理職自身が最も強く感じている課題は「管理職の負担増大」であり、管理職候補の不足と合わせて、組織の持続可能性を脅かす構造的問題となっています。日本能率協会マネジメントセンターの調査では、77%が「管理職になりたくない」と回答しており、管理職というポジションそのものの魅力が大きく低下していることが窺えます。

■なぜ中間管理職は「板挟み」になるのか
中間管理職のモチベーション低下には、構造的な要因があります。まず、役割の多重化です。従来のプレイングマネージャーとしての業務遂行に加え、部下の労務管理、メンタルヘルスケア、ハラスメント対応、ダイバーシティ推進、DX対応、さらにはコンプライアンスの遵守と、求められる役割は年々拡大の一途をたどっています。経営層からは成果を求められ、部下からは働きやすさを求められる。この「上下からの圧力」に日々さらされる中で、自らのキャリアやモチベーションを顧みる余裕すらなくなっているのが現状です。
パーソル総合研究所が2025~2026年の人事トレンドとして注目するキーワードにも「管理職の罰ゲーム化」が挙げられています。これは、管理職に昇進すること自体が報酬や権限の拡大よりもむしろ負担の増加を意味し、「罰ゲーム」のように感じられてしまう状況を指しています。報酬面での魅力が乏しく、責任だけが重くなるのであれば、優秀な人材ほど管理職への昇進を敬遠するのは当然の帰結といえるでしょう。

■組織として取り組むべき3つの支援策
では、中間管理職のモチベーションを守り、組織全体のエンゲージメントを高めるために、経営層や人事部門はどのような支援を行うべきでしょうか。ここでは3つの具体的な施策を提案します。
第一に、「役割の再定義と業務の引き算」です。中間管理職に求める役割を棚卸しし、本当に管理職が担うべき業務と、他の部門やテクノロジーに委ねられる業務を仕分けることが必要です。たとえば、定型的な労務管理業務はHRテクノロジーを活用して効率化し、管理職にはチームビルディングや部下の成長支援といった、人にしかできない付加価値の高い業務に集中してもらう。この「引き算のマネジメント設計」が、管理職の負担軽減の第一歩となります。
第二に、「管理職同士のピアサポート体制の構築」です。中間管理職は孤独になりがちです。同じ立場の管理職同士が悩みや知恵を共有できる定期的な場を設けることで、心理的な負担が大きく軽減されます。具体的には、月に一度の管理職ラウンドテーブルや、社内SNSを活用した管理職コミュニティの運営などが有効です。経営層がこうした場に参加し、管理職の声に耳を傾ける姿勢を示すことで、組織全体の心理的安全性も高まります。
第三に、「管理職のキャリアパスと報酬体系の見直し」です。管理職になることが「損」と感じられないよう、責任の拡大に見合った処遇の改善が不可欠です。金銭的な報酬だけでなく、学びの機会やキャリアの選択肢を広げることも重要です。たとえば、管理職経験者向けのエグゼクティブコーチング、外部研修への派遣、あるいは一定期間ごとの「マネジメント休暇」制度など、管理職であることの付加価値を実感できる仕組みを整えることが求められます。

■経営層に求められる「まなざし」の転換
これらの施策を実効性あるものにするためには、経営層自身の意識変革が欠かせません。中間管理職を「経営と現場をつなぐ便利な存在」として消費するのではなく、「組織の要として支え、育てるべき存在」として捉え直す必要があります。エンゲージメント向上の取り組みは、一般社員だけでなく管理職層にこそ必要です。管理職のエンゲージメントが高い組織では、チーム全体のパフォーマンスが向上し、離職率の低下にもつながるという好循環が生まれます。

■おわりに――管理職を「やりがいのあるポジション」に戻すために
中間管理職のモチベーション危機は、個人の資質や努力の問題ではなく、組織の構造的な課題です。負担を個人に押しつけるのではなく、組織全体でマネジメントの在り方を再設計していくことが求められています。管理職が生き生きと働ける組織こそが、変化の激しい時代を乗り越えていける組織です。今日の経営会議で、あるいは次の人事施策の立案の場で、「私たちは管理職を十分に支えられているだろうか?」と問いかけてみてください。その一つの問いかけが、組織変革の出発点になるはずです。

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