社員の「指示待ち」を変えたい!中小企業で当事者意識を育てる5つの方法とは?

「なぜウチの社員は言われたことしかやらないのか」――社長の悩みの正体
「もうちょっと自分で考えて動いてくれないかな……」。中小企業の社長なら、一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。朝礼で「主体性を持とう」と伝えても反応は薄く、会議で「何か意見はある?」と聞いても沈黙が続く。新しいプロジェクトを任せようとすると「それは自分の仕事ですか?」と返される。
こうした「指示待ち」の姿勢に悩む経営者は少なくありません。しかし、これは社員の能力ややる気の問題ではなく、「当事者意識」が育つ環境が整っていないだけかもしれません。実は、心理学や脳科学の研究から、当事者意識は生まれつきの性格ではなく、職場の仕組みや関わり方によって後から育てられることがわかっています。
米国ギャラップ社の最新調査(2024年発表)によると、日本で「熱意を持って働いている」社員の割合はわずか6%。調査対象139カ国の中で最下位レベルという衝撃的な結果です。つまり、約94%の社員が「言われたことをこなすだけ」の状態にあるということ。この数字を見ると、御社だけの問題ではないことがわかります。では、少人数の会社だからこそできる「当事者意識の育て方」を、心理学の知見を交えながら見ていきましょう。

当事者意識が低い原因は「脳の省エネモード」にある
そもそも、なぜ人は「自分ごと」として物事を捉えにくいのでしょうか。これには脳の仕組みが関係しています。脳科学では、人間の脳はエネルギーを節約するために、できるだけ「考えない」モードで動こうとする性質があることが知られています。これを心理学では『認知的倹約家(コグニティブ・マイザー)』と呼びます。つまり、脳は放っておくと「余計なことは考えず、指示に従っておこう」という省エネ状態になりやすいのです。
特に、日本の多くの職場では「上司の言う通りにやる」ことが評価されてきた歴史があります。中小企業でも、創業社長が強いリーダーシップで引っ張ってきた会社ほど、社員は「社長が決めてくれるから考えなくていい」という思考パターンに陥りがちです。これは社員が悪いのではなく、脳が環境に適応した結果なのです。
だからこそ、当事者意識を育てるには「考えざるを得ない環境」を意図的につくることが必要です。ここからは、中小企業の社長がお金をかけずに、今日から始められる5つの方法をご紹介します。

方法1:「Why(なぜ)」を伝えてから仕事を任せる
社員に仕事を頼むとき、「これやっておいて」と結論だけ伝えていませんか? 実は、この「What(何を)」だけの指示が、当事者意識を奪う大きな原因になっています。
心理学でいう『自己決定理論』では、人が主体的に動くためには「自律性」「有能感」「関係性」の3つが必要だとされています。なかでも「自律性」――自分で選んで決めている感覚――が重要です。そのためには、まず「なぜこの仕事が必要なのか」「会社にとってどんな意味があるのか」を伝えることが出発点になります。
たとえば、「来週までにこの資料をまとめて」ではなく、「来月の商談で新規のお客様に提案するんだけど、〇〇さんが現場で感じている強みを資料に入れたい。どういう構成がいいか、一緒に考えてもらえる?」と伝える。たったこれだけの違いで、社員の脳は「指示を処理するモード」から「自分で考えるモード」に切り替わります。

方法2:小さな「意思決定」の機会を日常的につくる
当事者意識を育てるうえで欠かせないのが、心理学でいう『自己効力感』です。これは「自分にはやればできる力がある」という感覚のことで、心理学者バンデューラが提唱した概念です。自己効力感が高い人ほど、困難な課題にも主体的に取り組む傾向があることが数多くの研究で示されています。
自己効力感を高める最も効果的な方法は、「小さな成功体験の積み重ね」です。中小企業では、大企業のように大きなプロジェクトを任せることは難しいかもしれません。しかし、日常の中に小さな意思決定の機会をつくることはできます。
具体的には、「今月の社内イベントの内容を考えてほしい」「この業務の改善案を3つ出してみて」「お客様へのお礼の方法を自分で決めていいよ」といったレベルで十分です。大切なのは、社員が「自分で決めて、うまくいった」と感じる経験を積むこと。この繰り返しが、脳の中に「自分は貢献できる」という回路を強化していきます。

方法3:「ジョブ・クラフティング」で仕事を自分仕様に変える
近年注目されている心理学の概念に『ジョブ・クラフティング』があります。これは、社員が自分の仕事のやり方や範囲、人間関係を主体的に工夫し、仕事をより意味あるものに変えていくことを指します。わかりやすく言えば、「与えられた仕事を自分なりにアレンジする力」です。
従来のマネジメントでは、仕事の内容は上司が決めるものでした。しかしジョブ・クラフティングの研究では、社員が仕事の一部でも自分で工夫できる余地があると、仕事への満足度やエンゲージメントが大幅に向上することが明らかになっています。
中小企業でこれを実践するのは意外と簡単です。たとえば、「この作業のやり方で、もっと効率的な方法があれば変えていいよ」「お客様対応で自分なりの工夫を加えてOK」と伝えるだけ。ある製造業の中小企業では、現場の社員に「自分の担当工程で1つだけ改善してみて」と声をかけたところ、半年で生産効率が8%向上したという事例もあります。大きな権限移譲ではなく、「小さな裁量」を渡すことがポイントです。

方法4:「感謝」と「承認」で脳の報酬系を活性化する
当事者意識を持って行動した社員に対して、適切なフィードバックを返すことも非常に重要です。脳科学の研究では、人は「認められた」「感謝された」と感じたとき、脳内でドーパミンという神経伝達物質が分泌されることがわかっています。ドーパミンは「もっとやりたい」というモチベーションを生み出す物質で、この報酬系が活性化されると、同じ行動を繰り返したくなる仕組みがあります。
ここで大切なのは、「結果」だけでなく「プロセス」を認めることです。「売上が上がったね」という結果の評価ではなく、「自分から提案してくれたのが嬉しかった」「あの場面で率先して動いてくれたおかげで助かった」というプロセスへの承認が、当事者意識を強化します。
中小企業の強みは、社長と社員の距離が近いこと。大企業では社長から直接声をかけられることは稀ですが、中小企業では毎日のように顔を合わせます。この距離の近さを活かして、社長自らが「ありがとう」「助かったよ」と声をかけること。これだけで社員の脳は「自分の行動には意味がある」と学習し、当事者意識が定着していきます。

方法5:「情報の透明性」で全員を経営の当事者にする
最後に紹介するのは、会社の情報をオープンにすることです。当事者意識が生まれない大きな原因のひとつに、「会社全体のことが見えない」という問題があります。社員が自分の仕事しか見えない状態では、「自分がどう貢献しているのか」がわかりません。
心理学には『意味づけ(ミーニング・メイキング)』という概念があります。人は自分の行動に意味を感じられるとき、より高い動機づけで取り組むことができるのです。そのためには、会社の売上や利益、受注状況、お客様の声といった情報を、できる範囲で社員と共有することが効果的です。
たとえば、月に一度、簡単な「経営報告会」を開いてみてはいかがでしょうか。15分程度で構いません。「今月の売上はいくらだった」「この案件はこういう理由で受注できた」「来月はこういう目標でいきたい」。数字を見せることで、社員は初めて「自分の仕事が会社のどこに繋がっているのか」を実感できるようになります。ある食品加工の中小企業では、月次の数字を全社員に公開したところ、社員から自発的にコスト削減のアイデアが出るようになり、年間で約200万円の経費削減につながったそうです。

まとめ:「指示待ち社員」は環境が変われば「自走する社員」に変わる
今回ご紹介した5つの方法は、どれも特別な予算や仕組みを必要としません。「なぜ」を伝える、小さな決定権を渡す、仕事の工夫を認める、感謝を言葉にする、情報を共有する。どれも明日からできることばかりです。
当事者意識は、性格ではなく「環境」によって育まれるものです。脳は環境に適応する力を持っています。「指示に従うだけで良い環境」なら脳は省エネモードになり、「自分で考え、行動することが求められる環境」なら脳は主体的に動くモードに切り替わります。
社長が「ウチの社員は受け身だ」と感じるなら、まずは今日、たった一人の社員に「これ、どう思う?」と意見を聞いてみてください。その小さな一言が、社員の脳に「自分の意見には価値がある」というシグナルを送ります。そこから当事者意識の芽が育ち始めるのです。あなたの会社の社員は、きっと変われます。最初の一歩を踏み出すのは、社長であるあなた自身です。

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