求人広告だけに頼らない採用へ|中小企業がリファラル採用で人材確保を成功させる4つのステップ

「また今月も応募ゼロか……」

求人サイトに数十万円をかけて広告を出したのに、届いた応募はわずか数件。しかも、求めている人材像とは少し違う。ハローワークにも求人を出した。知り合いの経営者に聞いても、「うちも人が来ないよ」と苦笑いされる。

そんな悩みを抱えている中小企業の社長は、少なくありません。

採用市場では、大企業の知名度や待遇にどうしても目が向きやすくなります。中小企業が求人広告だけで人材を集めようとすると、どうしても費用対効果が合わない場面が出てきます。

そこで注目したいのが、「リファラル採用」です。

リファラル採用とは、社員に友人や知人を紹介してもらう採用方法のことです。昔ながらの縁故採用と似ていますが、大きく違うのは、紹介された人を無条件で採用するわけではないという点です。あくまで紹介は応募や出会いのきっかけであり、採用するかどうかは通常の選考で判断します。

つまり、社員の人脈を活かしながらも、公平性を保って進める採用方法なのです。

採用支援サービスを手がけるTalentX社の2025年版調査によると、リファラル採用を実施している企業は62.5%にのぼり、2018年の41.7%から大きく増えています。さらに注目したいのは、従業員100名未満の企業と1,000名以上の大企業とで、採用実績に大きな差が見られなかったという点です。

つまり、リファラル採用は大企業だけのものではありません。むしろ、社長の顔が見え、社員同士の距離が近い中小企業にこそ向いている採用方法だと言えます。

なぜリファラル採用は中小企業に向いているのか

中小企業にとって、リファラル採用のメリットは大きく3つあります。

1つ目は、採用コストを抑えやすいことです。
求人広告費や人材紹介会社への手数料に比べると、社員への紹介協力金やお礼の方が負担を抑えられる場合があります。採用予算が限られている中小企業にとって、これは大きなメリットです。

2つ目は、入社後のミスマッチが起こりにくいことです。
紹介する社員は、会社の雰囲気や仕事内容を知っています。そのうえで「この人なら合いそうだ」と感じた人を紹介します。紹介される側も、事前に社内のリアルな雰囲気を聞くことができます。

求人広告では、どうしても会社の良い面が中心になります。しかし、社員からの紹介であれば、「ここは働きやすいけれど、忙しい時期は本当に忙しいよ」「社長は距離が近い人だけど、スピード感は求められるよ」といった現実も伝わります。

このように、入社前に良い面も大変な面も知ることは、早期離職の防止につながります。採用心理学では、入社前の期待と入社後の現実のギャップが大きいほど、離職につながりやすいと考えられています。紹介によって事前にリアルな情報が伝わることで、「こんなはずではなかった」というズレを小さくできるのです。

3つ目は、転職サイトに登録していない人にも出会えることです。
良い人材ほど、今の職場で活躍していることが多く、転職市場に出てきません。求人広告を出しても、そもそも見ていない可能性があります。しかし、社員の友人や前職の同僚、知人であれば、直接声をかけることができます。

つまり、リファラル採用は「今すぐ転職したい人」だけでなく、「良い会社があれば考えてもよい人」にも届く採用方法なのです。

紹介で入った人が定着しやすい理由

紹介で入社した人が定着しやすい理由は、単に「知り合いがいるから安心」というだけではありません。

大きな理由の一つは、入社前から会社への理解が深まりやすいことです。紹介者を通じて、仕事内容、社風、人間関係、社長の考え方などを事前に知ることができます。

もう一つは、入社後に相談できる相手がいることです。新しい職場に入った直後は、誰でも少なからず不安を感じます。そんな時に、社内に一人でも知っている人がいるだけで、心理的な負担はかなり軽くなります。

「このことは誰に聞けばいいのか」
「この会社では、どこまで自分で判断していいのか」
「社長にどう相談すればいいのか」

こうした小さな不安を、早い段階で解消できることが、職場への適応を早めます。

中小企業では、一人の退職が現場に大きな影響を与えます。だからこそ、採用できるかどうかだけでなく、入社後に長く活躍してもらえるかどうかが重要です。その点で、リファラル採用は「採用」と「定着」をつなぐ有効な方法なのです。

中小企業がリファラル採用を始める4つのステップ

ステップ1:社長の口から「紹介してほしい」と伝える

リファラル採用の第一歩は、立派な制度を作ることではありません。まずは、社長自身が社員に向けて「いい人がいたら紹介してほしい」と伝えることです。

多くの社員は、そもそも「友人を会社に紹介していい」という発想を持っていません。社長から言われて初めて、「紹介してもいいんだ」と気づきます。

朝礼やミーティングで、次のように伝えてみてください。

「今、会社として一緒に働いてくれる仲間を探しています。もし皆さんの知り合いで、うちの会社に合いそうな人がいたら、ぜひ紹介してください。皆さんが信頼している人なら、私たちもぜひ一度会ってみたいです」

この一言だけでも、社員の意識は変わります。大切なのは、一度言って終わりにしないことです。採用したい職種やタイミングに合わせて、繰り返し伝えることが必要です。

ステップ2:ルールをシンプルに決める

次に、「誰を紹介してほしいのか」「どう紹介すればよいのか」「紹介した後はどうなるのか」を簡単に決めておきましょう。

たとえば、次のような内容です。

・募集している職種
・求める人物像
・紹介の方法
・選考の流れ
・紹介してくれた社員へのお礼
・不採用の場合の扱い
・入社後すぐ退職した場合の扱い

ルールがあいまいだと、紹介する社員が不安になります。

「紹介したら、友人は必ず採用されるのか」
「不採用になったら、自分が気まずくならないか」
「紹介したのに何の連絡もなかったらどうしよう」

こうした不安を減らすためにも、紙1枚でよいので、簡単なルールを作っておくことが大切です。

なお、社員に紹介協力金や報奨金を支払う場合は、職業安定法との関係に注意が必要です。紹介の対価として安易に支払うのではなく、就業規則や賃金規程に明記し、賃金・手当として適切に整理する必要があります。実際に制度化する際は、社会保険労務士などの専門家に確認することをおすすめします。

ステップ3:いきなり面接ではなく、気軽に会える場をつくる

紹介された人は、必ずしもすぐに転職したい人とは限りません。

そのため、最初から「履歴書を送ってください」「面接に来てください」と言うと、相手も紹介した社員も身構えてしまいます。

まずは、職場見学やカジュアル面談、食事をしながらの顔合わせなど、気軽に会える場をつくることがおすすめです。

「一度、会社の雰囲気だけ見に来ませんか」
「社長と軽く話してみませんか」
「転職するかどうかは別として、情報交換しませんか」

このくらいの温度感で始めた方が、相手も動きやすくなります。

人は、知らない会社には不安を感じます。しかし、社長や社員と何度か会ううちに、少しずつ安心感が生まれます。最初から採用に結びつけようと焦るのではなく、「まず知ってもらう」ことから始めるのが、リファラル採用のコツです。

ステップ4:紹介してくれた社員を丁寧にフォローする

リファラル採用で最も大切なのは、紹介してくれた社員へのフォローです。

社員は、友人や知人を紹介することで、少なからずリスクを背負っています。不採用になれば気まずくなるかもしれません。入社後にすぐ辞めてしまえば、友人との関係に影響するかもしれません。

だからこそ、結果にかかわらず、紹介してくれたこと自体に必ず感謝を伝えることが大切です。

「紹介してくれてありがとう」
「今回は採用には至らなかったけれど、声をかけてくれたことが本当にありがたい」
「また合いそうな人がいたら、ぜひ教えてほしい」

このような一言があるだけで、社員は安心します。

逆に、不採用理由を伝えない、紹介後の進捗を共有しない、紹介した社員に責任を感じさせる、といった対応をしてしまうと、「もう二度と紹介したくない」という空気が広がってしまいます。

リファラル採用は、制度以上に信頼で動く採用方法です。紹介してくれた社員を大切にすることが、次の紹介につながります。

リファラル採用で失敗しないための注意点

リファラル採用にはメリットが多い一方で、注意点もあります。

1つ目は、人材が似たタイプに偏りやすいことです。
社員が紹介する人は、価値観や考え方が似ていることが多くなります。それ自体は社風に合う人を採用しやすいというメリットでもありますが、紹介に頼りすぎると、組織の多様性が失われる可能性があります。

そのため、リファラル採用だけに絞るのではなく、求人広告、ハローワーク、採用ページ、SNSなど、複数の採用ルートと組み合わせることが大切です。

2つ目は、制度だけ作っても紹介は生まれないことです。
紹介協力金を設定し、社内に告知すれば社員が動くわけではありません。社員が友人を紹介するのは、「この会社なら友人に勧めても恥ずかしくない」と思えているときです。

つまり、リファラル採用の土台にあるのは、日頃の職場づくりです。

社員が会社に不満を持っている状態で、「誰か紹介して」と言っても、紹介は生まれません。むしろ、社員の本音が見えてしまうこともあります。

リファラル採用は、会社の採用力を高める方法であると同時に、社員から見た会社の魅力を映し出す鏡でもあるのです。

まとめ|社員が友人を誘いたくなる会社になっていますか?

リファラル採用は、求人広告費を抑えるための単なる採用テクニックではありません。

本質は、「社員が大切な友人を誘いたくなる会社になっているか」という問いにあります。

社員が「うちの会社、けっこういいよ」「社長に一度会ってみたら」と言ってくれる会社は、採用にも定着にも強くなります。逆に、誰も友人を誘いたがらないとしたら、それは採用手法以前に、職場づくりを見直すサインかもしれません。

中小企業にとって、採用力は知名度や広告費だけで決まるものではありません。社員が会社に誇りを持ち、安心して人に勧められるかどうか。その積み重ねが、これからの採用力になります。

まずは明日の朝礼で、こう伝えてみてください。

「もし、うちの会社に合いそうな人がいたら、ぜひ紹介してください」

その一言が、求人広告だけでは出会えなかった人材との入口になるかもしれません。

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