なぜ人が定着しないのか？ ～“職場の空気”がすべてを決めている～

「うちの職場、なんだか空気が悪くなってきた」
「採用しても、数ヶ月で辞めてしまう」
「制度は整えたのに、なぜ人が定着しないのか分からない」

このような悩みを抱えている中小企業の経営者や人事担当者の方は少なくありません。実はその背景にあるのは、「制度」や「待遇」ではなく、“職場の空気”という目に見えないものなのです。
そしてその空気の正体は、日々の「感情の積み重ね」。
働く人たちの感情体験が、職場の雰囲気をつくり出し、離職率や定着率に直結しているのです。

■「職場の空気」は偶然できるものではない
“職場の空気”とは何でしょうか？
それは、メンバー同士の信頼関係、上司とのコミュニケーションの質、会議の雰囲気、雑談の有無といった、感情の流れや心理的な温度感の総体を指します。

たとえば、上司が部下に投げかける何気ない一言が、信頼を育てることもあれば、逆に不安や不信感を与えることもある。何気ない会話の中にこそ、組織の文化や空気感は現れるのです。
こうした空気は、放っておけば自然に良くなるわけではありません。むしろ、放置すればするほど「見えないストレス」が蓄積し、やがてそれが離職というかたちで現れてしまいます。

■「職場の空気」をよくするには？
では、どうすれば職場の空気を良くすることができるのか。
その答えが「感情ドライブ™マネジメント」という考え方です。
感情ドライブ™マネジメントとは、職場における感情の流れを意図的に設計・マネジメントする取り組みです。具体的には、メンバーが安心感や期待感、貢献実感を抱けるような環境を意識的に創っていくことを指します。

たとえば、
• 1on1で安心して本音を話せる時間を設ける
• 感謝や称賛を“見える化”するツールを導入する
• ネガティブな感情を吐き出せる“感情ミーティング”を取り入れる
といった施策は、すべて感情設計の一部です。ポイントは「人の気持ちは環境に影響される」ことを前提に、職場を意図的にデザインしていくことにあります。

■離職率が高い職場の“空気”に共通する3つの特徴
感情設計を怠る職場では、次のような空気が支配的になります。
① ネガティブ感情の放置
「忙しいから仕方ない」と、イライラや不安、苛立ちといった感情が見て見ぬふりをされている状態。これが続くと、心が離れていきます。

② 無関心・沈黙の文化
「本音を言うと損をする」「意見を言っても変わらない」――そんなあきらめムードが蔓延すると、社員は静かに辞めていきます。

③ 認められない空気感
努力や成果に対するフィードバックが不足している職場では、やりがいが感じられず、モチベーションが低下します。
逆に、定着率の高い職場では「感情が安心して表現できる土壌」が整っていることが多いのです。

■「感情ドライブ™マネジメント」で得られる3つの効果
「感情ドライブ™マネジメント」に取り組むことで、職場に以下のような変化が生まれます。
1. 定着率が上がる
感情が健やかに流れる職場は、「ここにいても大丈夫」「このチームの一員でいたい」という感覚を社員にもたらします。これは、離職防止に直結します。

2. チームの関係性が深まる
感情のやりとりが日常化すれば、メンバー同士の信頼関係が強まり、連携や協働の質も向上します。

3. リーダーシップが磨かれる
感情に目を向けることで、管理職自身の“気づく力”が高まり、マネジメント力が自然と強化されます。

■「空気を変える」ことは経営課題の解決につながる
企業が抱える課題の多くは、「人」に関するものです。採用がうまくいかない、人が育たない、すぐ辞めてしまう──これらの問題の根底には、職場の空気があります。そして、その空気は感情の積み重ねによってできています。

感情をマネジメントし、職場の空気を意図的に設計することで、離職率の改善だけでなく、生産性やチームの創造性も向上します。まさに「感情ドライブ™マネジメント」が、これからの経営に欠かせない視点なのです。