離職率を下げたいなら、“声かけ”を変えよう ～ペップトークで実現する人材定着の職場づくり～

採用しても人が定着しない。育てても、数年で辞めてしまう。
そんな悩みを抱える企業は少なくありません。人材定着の課題は、単に評価制度や待遇面だけの問題ではなく、日々のコミュニケーション──とりわけ「声のかけ方」に深く根ざしているのです。

近年注目されている「ペップトーク（PEP TALK）」をご存じでしょうか？
もともとはアメリカのスポーツ現場で使われていた、本番直前に選手の背中を押す“短く前向きな励ましの言葉”のこと。監督が選手にかける一言が、プレーの質を左右する決定打になるとされてきました。

この「短くてポジティブな声かけ」の力が、いまビジネスの現場、特に人材の定着支援においても効果を発揮すると注目されているのです。

なぜペップトークが「定着率」を高めるのか？
人が職場を去る理由は、必ずしもスキルや待遇の問題だけではありません。
リクナビNEXTの「退職理由の本音ランキング」では、「上司との関係」「職場の雰囲気」「評価されていない」「存在価値を感じない」といった感情に関わる項目が上位に挙がっています。

裏を返せば、日々の声かけが前向きで安心できるものであれば、そうしたストレスは軽減され、離職のリスクも下げられるということです。

たとえば、次のようなペップトークは、社員のモチベーションや心理的安全性を高め、定着意欲を引き出します。

「ありがとう、助かったよ」→ 存在価値の承認

「君に任せたいと思っている」→ 信頼と期待の共有

「今日もよくやってるね」→ 日々の努力への感謝と賞賛

このような言葉が、社員の心を少しずつほぐし、「ここで働き続けたい」と思える空気を職場に生み出していくのです。

ペップトークは誰にでもできる“伝え方の工夫”
ペップトークと聞くと、「ポジティブなことしか言ってはいけない」「叱ってはいけない」と思われがちですが、実際はそうではありません。
ペップトークとは、相手を責めるのではなく、“前向きに伝える技術”です。

たとえば、以下のように少し言い換えるだけで、相手の受け止め方が大きく変わります。

NG：「こんなミスするなよ」
　→ OK：「次はどうすれば防げると思う？」

NG：「何度言わせるんだ」
　→ OK：「次はうまくやれるはず、今回はそのためのステップだね」

ちょっとした言い方の違いが、信頼関係の積み重ねにつながります。
ペップトークは特別なスキルではなく、誰もが今日から実践できる“言葉の習慣”なのです。

定着率を高めるカギは、リーダーの「言葉選び」にある
人材の定着を左右するのは、評価制度でも職場設備でもありません。日々のコミュニケーションの積み重ねこそが、定着率を大きく左右するのです。

中でも重要なのは、リーダーの“言葉の選び方”。
「君がいてくれて本当に助かってるよ」
「この仕事、君に任せたい」
──こうした一言が、社員に安心感と自己肯定感をもたらします。

実際に、ペップトークを取り入れたチームでは、社員の表情が明るくなり、1年後の離職率が目に見えて改善したという事例も多く見られます。

ペップトークで「辞めたくなくなる職場」をつくる
人材の流出を防ぐには、「辞めないで」と引き止めるのではなく、「ここで働きたい」と自然に思える職場をつくることが重要です。

そのための第一歩が、「声かけの質」を変えること。
ペップトークは魔法の言葉ではありませんが、日々の声かけに少しずつ変化を加えるだけで、職場の空気は確実に変わっていきます。

「若手がすぐに辞めてしまう」

「部下が何を考えているのか分からない」

「職場の空気がなんだか重い」

そんなお悩みをお持ちなら、今日から一言目の声かけを変えてみてください。

離職率を下げる鍵は、制度でも評価でもなく、あなたの言葉の中にあるかもしれません。