「きちんと1on1面談をしているのに、なぜか社員が辞めてしまう」
多くの管理職が感じている違和感の一つです。
1on1面談は、育成や離職防止の手段として定着してきましたが、実際には「本音が聞けない」「何も言わずに辞められてしまう」といった声も少なくありません。
その背景には、「心理的な配慮=心理設計」が足りていないという問題があります。
つまり、“話す場”はあっても、“気持ちを出せる場”にはなっていないのです。
「辞めたいと言えなかった」社員の本音
離職の理由は、必ずしも明確な不満ではありません。
多くの場合、「なんとなくつらい」「頑張っても報われない気がする」といった、小さな感情の積み重ねがきっかけになります。
たとえばこんな思い──
• 「頑張ってるのに、ちゃんと見てもらえてない気がする」
• 「上司が自分に関心を持ってないと感じる」
• 「話してもどうせ変わらないと思っている」
こうした感情は本人からも言葉にされず、やがて“ある日突然”の退職として現れます。
けれど本当は、「辞めたい」と言うチャンスがなかっただけ。
「わかってほしい気持ち」が、届かなかったのです。
面談は「報告」ではなく「心の確認」
多くの1on1面談が、業務の進捗確認やアドバイスの時間になっています。
でも本来、1on1は「心の安全」をつくる時間です。
社員が「この人には話せる」「ここにいていい」と感じられるかどうかが、面談の成否を左右します。
そのためには、次の3つのポイントがとても重要です。
①安心して話せる「場づくり」
社員が本音を出すには、「話しても否定されない」「ちゃんと聴いてもらえる」という安心感が必要です。
そのためには、
• 面談中にスマホやPCを見ない
• 相手の話をさえぎらず、最後まで聴く
• 小さなうなずきや「ああ、なるほど」といったリアクションを返す
こうした態度が、「ここなら大丈夫」と思わせてくれます。
特に、「まずは受け入れる」という姿勢が何より大切です。
アドバイスや意見よりも、「その気持ち、ちゃんと聴いてるよ」と示すことが、信頼につながります。
② 感情に気づかせる質問
「何か困ってることある?」という質問では、なかなか本音は出てきません。
大切なのは、相手の感情を言葉にするきっかけをつくることです。
たとえばこんな質問が効果的です。
• 「最近、やりがいを感じたのはどんなときでしたか?」
• 「ちょっとしんどいな…と思ったことはありますか?」
• 「ここ最近、何かモヤモヤしたことはありましたか?」
このような問いは、社員自身が「自分は何を感じていたのか」に気づくきっかけになります。
そして、それを受け止めてもらえることで「わかってもらえた」という実感が生まれます。
③ 感情に共感し、努力を認める
面談の最後で大切なのは、「助言」ではなく「共感と承認」です。
たとえばこんな言葉──
• 「それはつらかったよね」
• 「それでも続けてきたの、すごいと思う」
• 「ちゃんと向き合ってて、偉いよ」
こうした言葉は、自分の気持ちをわかってくれたという安心感を生み、社員の心を支える力になります。
また、成果だけでなく「努力」や「姿勢」への承認は、働く意欲を長く支えるエネルギーになります。
まとめ:「感情が話せる職場」が辞めない職場になる
社員の離職を防ぐカギは、「何を話したか」よりも、「どんな気持ちで面談を終えたか」にあります。
• 「この人には本音が言える」
• 「ここにいてもいいと感じられる」
• 「自分の気持ちをわかってくれる上司がいる」
そんな実感がある職場こそ、社員が辞めない職場になります。
だからこそ、1on1面談は“技術”ではなく、“感情”を扱うマネジメント。
「感じたことを、安心して話せる場」
それをつくれる上司こそ、組織の未来を守る存在なのです。