ここ数年、多くの中小企業の社長・人事の方から、こんな声を聞きます。
「採用にはなんとか成功するのに、3年もたない」
「せっかく育てても、戦力になった頃に辞めてしまう」
最新の調査では、中小企業の育成期間の過半数が「1年未満」という結果が出ています。
一方で、3年以内離職率が30%以上の企業の多くは、育成計画が「1年未満」にとどまっていることも明らかになりました。
つまり、「早く一人前にしたい」という善意のプレッシャーが、結果として短期育成+早期離職という悪循環を生んでいる可能性が高いのです。
1. 「1年育成」では、若手の不安は消えない
新卒・若手社員にとって、入社1年目は、そもそも“仕事”とは何かを学ぶ時期です。
この段階で求められるのは、「一通りの仕事を覚えさせる」ことよりも、
• 失敗してもやり直せるという安心感
• 相談すれば必ず誰かが応えてくれるというつながり感
• 自分の成長が少しずつでも実感できるという手応え
です。
ところが、現場は人手不足で、ベテラン社員も余裕がない。
「もう1年目なんだから」「そろそろ一人で回して」と急がせることで、
若手は「大丈夫かな?」と不安を抱きやすくなります。
これは、心理的安全性の調査でも裏付けられています。
心理的安全性が高い職場では、燃え尽き率が6ポイント低いというデータがあり、
安心して話せる場がエネルギー維持の鍵になっているのです。
「1年で一人前」は目標にしても構いませんが、
「2〜3年かけて育て切る」前提に設計を変えること。
これが、若手の定着率を高める第一歩です。
2. “感謝される経験”が、モチベーションを押し上げる
調査によると、仕事のモチベーションが上がる瞬間として、多くの人が「上司や同僚から感謝されたとき」を挙げています。
また、新入社員の約6割が「入社後にモチベーションが高まった」と答えており、
その要因として「上司から信頼されている」「自分なりの工夫が評価されている」といった要素が大きく影響していることもわかっています。
ここから言えるのは、
若手のモチベーションは、“できていること”に光を当てることで育つ
ということです。
忙しい現場では、どうしても「まだできていないところ」ばかりが目につきます。
しかし、たとえば次のような声かけを日常化するだけでも、
若手のモチベーションと定着意向は大きく変わります。
• 「昨日のあの対応、よかったよ」
• 「報告が早くて助かった」
• 「その工夫、うちの標準にしていこうか」
“感謝”と“信頼”を口に出すことは、コストゼロでできる最大の投資です。
3. あなたの会社で、明日からできる3つの打ち手
最後に、中小企業向けに「明日からできる具体策」を3つ挙げます。
1. 育成期間を「3年計画」に引き伸ばす
• 1年目:仕事と会社の全体像を知る「基礎習得期」
• 2年目:任された領域で成果を出し始める「自立期」
• 3年目:後輩指導や改善提案に挑戦する「リーダーシップ開発期」
という3段階モデルにし、「1年目からフル戦力」を前提にしない。
2. 毎週1回、「感謝フィードバック・タイム」を決める
• 朝礼でメンバーそれぞれに感謝を伝える。
• 上司から部下へ「今週よかったこと」を1つ伝える時間をつくる。
• 同時に、部下からも「職場や上司に感謝していること」を一言話してもらう。
3. 心理的安全性を高める
• 「この1ヶ月、職場で遠慮して言えなかったことはありますか?」
• 「安心して相談できる人はいますか?」といった2~3問の簡単なアンケートを、匿名で実施する。
• 出てきた声を、経営陣・管理職がきちんと共有し、「改善に着手したこと」を必ず発信する。
まとめ
若手が辞めない会社は、決して「特別な福利厚生」や「高給」だけで定着させているわけではありません。
• 育成を1年育成ではなく 3年育成として設計する
• 日常の中で感謝と信頼を言葉にする文化を持っている
• 心理的安全性を「なんとなくの雰囲気」ではなく、意識してつくるマネジメントのテーマにしている
この3つを押さえるだけで、
「辞めない会社」「人が育つ会社」への第一歩を踏み出せます。